内田樹『困難な結婚』− 自分の力で考えましょう。【ゆり】

内田樹著『困難な結婚』を読んだ。

小学生の「今月の目標」みたいな記事タイトルつけちゃったけど、すごくよかったので書く。

 

私自身が自他共に認める内田先生のファンである、という個人的な話は置いといて、普段は「これ、すごくいいんだけど、私の周りでこの話興味ありそうな人あんまりいないだろうなぁ・・・」という本もままあるのですが、この本は周りの人にも勧められる。

『結婚』というタイトルはついているけど、誰が読んでも”自分宛のメッセージ”を受け取ることができる本だと思います。 

 

困難な結婚

困難な結婚

 

 

結婚生活で小さな不満がある人、婚活で悩んでいる人はもちろん、転職や仕事に悩んでいる人、人間関係に疲れている人。

なんなら、悩んでなくても、「あーこう考えたらいいんだなー」と思えるお話がたくさんでした。

 

目次だけさらっと見ると、

・「もっといい人」は現れません

・結婚は誰としてもいい

・今より幸せになるために結婚してはいけません

 

とか、一部の女子にとっては「悟りの境地かな?」みたいなタイトルが並んでいるのですがw

これで「は?」とか思わないでね、野放しにポイっとされるわけじゃないので是非本論読んでほしい。

 

本文は、結婚やそれにまつわるお悩みに対して、内田先生が回答するQ&A形式。いろいろ紹介したいところはあるけれど、私がひとつ紹介するならこの部分。

 

P.41  

Q.「友人に、有名大学を出たものの、新卒で入った職場を辞めたあと、良い転職先に恵まれず、今は派遣社員として安い賃金で酷使され、異性との出会いもまったくないという人がいます。」

これに対する内田先生の回答、結婚の話からバンバン遠ざかっていくんですけど。

最初の職場を辞めてしまったのがどういう理由だったのか分かりませんけれど、そこにいささか問題がありそうな気がします。

仕事を辞めることについては、”こんなところに長く勤めていたら生きる力が衰えてしまうということが実感的に分かるなら”さっさと辞めたほうがいいと言っている先生。

だけど、”実感的に分かる”というのは意外なほど難しいと私は以前から思っていて、それをきれいに説明されているのが下記の部分。

「仕事がつらい」の「つらさ」には2種類あるとのこと。

ひとつは「それくらいのつらさは成長過程の自然」ということがわからなくて、せっかくの修行の場を立ち去ってしまう人。これは、たくさんいます。でも、「つらさ」の種類がわからない人にはもう一種類あります。それは、「ここは生きる力が衰微してゆくだけの職場だから、一刻も早く逃げ出したほうが良い」という生物としての直感を信じずに、意地になって仕事を辞めない人です。これも同じくらいたくさんいます。

前者はあるとしても、後者みたいな人、周りにいませんか。

修行の場だと勘違いして(自分に思い込ませて)自ら茨の道を選んでいくような、「この人、不幸専なのか?」って人が・・・。

私は仕事やめて初めて自分が後者だったように思うけど、内田先生的にいうと、そういう自分が出している信号に気付けない、「シグナルを読む力」が自分には足りていないように思う。体感的には、直感で感じたことに対して直感のままに受け止めずに、一度別の角度から考え直してみる癖が強すぎた傾向。他人の視点から見たらどうか?他の人にはどう思われているか?を過剰に気にしているとだんだんとシグナルが働く力が弱まっていくような気がしています。

自分を正常に稼動させるためにはまず自分を守らないといけないので、他人視点を気にしすぎていると当然なんだかよくわからないでたらめな行動になってしまう。

シグナル感度が低いと仕事はうまくいかないし、変な男(または女)に引っかかるし、SNSでずっと愚痴言ってたり、そのうち体壊したりするんだろうね。自戒を込めてw

話は戻って本論はその後、以下のように続きます。

相談してきたお友だちについて言うと、その人の問題は「葛藤しなかったこと」です。もっと真剣に悩むべきだった。これでいいんだろうかともっと悩むべきだった。

葛藤というのは本当にたいせつなんです。シンプルでわかりやすい解を求める人がたくさんいますけれど、「どういう仕事をするべきか」「誰と結婚すべきか」みたいな問いにシンプルな一般解なんかありません。そのつど唯一無二の特殊なケースなんですから、真剣に葛藤しないといけない。

当たり前だけど「自分でちゃんと考える」ことをいかにきちんとできるかということですよね。「ひとつの職場は最低3年いないといけない」論が幅をきかせるとか、大事な決定を下すのに占に課金する人とか、みんなシンプルでわかりやすい解を求めているからだよね。

自分で考えるってめっちゃ大変だし面倒だし難しいけど、いつまでも後回しにしているとけっこう大変なめにあってしまう。どうやって考えるかを学ぶために本読んだり人と話したりするんでしょうね。そしてその考えるプロセスで、自分自身の価値観がぼんやーりと見えてきて、そいういうことを積み重ねることでやっとちゃんとした大人になれるのかな。

また、「自分でよく考えて決断した」という自信があればそれを担保に、何か問題が起こってもできる限り前向きに解決の道を探していけるのかなぁと思います。自分で決めた以上、他人や環境のせいにはできないからね。

内田先生の本は、これを書くのに辿り着くまでに信じられないほど膨大なインプットがあったのだろうなぁと感動するし、自分が頑張っていろんなインプットしてるやつ、先生にたった数ページで全部結論書かれた、って感じがして最高。

というわけでこのQに対する内田先生のAは、

「もっと悩んでね」。以上。

 とのことでした。

皆さんにも読んでいただいて、感想言い合ったりしたい・▽・